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WELQの問題から考える薬機法(旧薬事法)と、メディアへの影響について

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DeNAのキュレーションメディア「WELQ」が世間をお騒がせしておりますね。

先日、謝罪の記者会見も行われたところです

法律の専門知識は多くはありませんが、日本語が読める範囲で、この問題について、考えてみたいと思います。

特に、ブログやメディアを運営する立場から考えてみたいと思います。

間違っているところあればご指摘いただけると嬉しいです。

なにが問題だったのか

記者会見の記事にある通り、問題点として挙げられているのが

  • 著作権法
  • 薬機法(旧薬事法)

の二点です。センセーショナルな問題もあり、ここが混同されてボロクソ叩かれまくってますが、切り分けて考えたいと思います。

著作権法

著作権法の問題に関しては、クラドソーシングなどを用いた大量の記事生産が問題となりました。

特に、マニュアルにおいて、「他サイトの転用を推奨していると捉えられかねない表現がされていた」ことが問題でした。

著作権法を違反することを推奨しているようなマニュアルとなっています。

こちらに関しては、メディア運営者の立場からすると

  • 引用するときは引用元を明らかにする
  • 他のサイトや本の内容を参考にはするが、文章は自分で考える・指示する
  • クラウドソーシングなどから納品された文章をサイトに載せる場合は、コピペチェックツールなどを利用しチェックする

などを考慮すれば良いと思います。

マニュアルで禁止していても、自分以外が書いた文章が「他サイトの転用」をしているかどうかの判定はとてもむずかしいと思います。

薬機法(旧薬事法)

薬機法(旧薬事法)を見てみます。

この法律は、

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)

に関しての法律で、

品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止

が目的となっています。化粧品まで入ってるので、影響範囲が大きいです。

まず、メディアが医薬品等の販売会社ではないと想定して話を進めます。

注目するべきワードは「何人も」と「広告」です。

「何人も」は「誰もが」という意味なので、一般市民にも当てはまります。

また、メディアは「広告」に当てはまるのかの議論があるので、こちらも注目ワードとなります。

第六十六条 (誇大広告等)

最初に、「何人も」が出てくるのが第六十六条です。この注目すべきは1項の

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

です。医薬品等に関しては、嘘や誇大な記事を「記述」してはいけません。ブログ記事にしてはいけません。

「流布」しては行けないので、口頭でもアウトのように読み取れます。

「虚偽又は誇大な」がどの程度か、が判断に困るところです。

第六十八条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)

次に「何人も」が出てくるのがこの条です。

何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

ちょっとややこしいのですが、例えば第十四条第一項を見てみると、

医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)又は厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。

と書いてあり、医薬品等には基準が存在し、

  • 医薬品と医薬部外品に関しては、指定されている基準以外のもの
  • 化粧品に関しては、指定されている成分が入ってるもの

に関しては、承認を受ける必要があることがわかります。

その承認を受ける必要がある医薬品等に関して、承認を受ける前に、「広告」をしてはいけないという法律になっています

さて、この「広告」が何か?が問題になります。

またここで注意しておきたいのが、第六十六条 (誇大広告等)とは違い、「記述し、又は流布してはならない」とは書いてないことです。

承認前の医薬品等に関しては、「広告」はNGですが、「記述」および「流布」に関しては問題なさそうです

WELQで考える、薬機法(旧薬事法)

WELQでは何が問題だったのか、東京都、WELQ問題でDeNAを“呼び出し” 「同様な他サイトへの対応も検討」を見てみましょう。

同課の河野安昭担当課長は、「医学的根拠がない情報が流れているかもしれないと、音喜多議員から報告を受けた。WELQは医薬品販売サイトではないため、従来は監視対象ではなかったが、情報サイトであっても、『特定の商品がこういう病気に効く』と記載すると法的には医薬品に当たる。WELQの記事は薬機法の観点からも問題があると判断した」と話す。 医療に関する不正確な情報や、薬機法違反とみられる情報を掲載しているサイトがWELQ以外にも多数あることは「承知している」(河野担当課長)という

議論のポイントとなるのはここです。分解してみていくと、まず

「『特定の商品がこういう病気に効く』と記載すると法的には医薬品に当たる」

と主張しています。薬機法(旧薬事法)の第二条の定義より、言及された特定の商品は「医薬品」となります。ここではまだ法律に違反していません。

次の

「医療に関する不正確な情報や、薬機法違反とみられる情報を掲載している」

がポイントですが、ここがはっきりしません。違反していると考えられるのは、第六十六条 (誇大広告等)か第六十八条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)が有力候補です。

承認が必要な医薬品等のケース

さて、まずこの特定の商品が、承認が必要な医薬品だとしましょう。まず考えるべきは、第六十八条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)についてです。

ポイントは「広告」になります。この広告に関しては、医薬品等広告講習会 資料 の「第5章 表示・広告関連通知等」の「インターネットによる医薬品等の広告の該当性に関する質疑応答集(Q&A)について」が問題を解決してくれそうです。

このQ&AのQ5が参考になるので引用します

Q5. 医薬品等を海外から日本国内に販売するサイト又は個人輸入代行を行うサイトを紹介・誘導しているサイト(以下「紹介サイト」という。)において、特定の医薬品名等が表示されている場合には、当該紹介サイトが広告を行っているとみなしてよいか。

という質問です。良い質問ですね。これに対しての答えが

A5. 当該紹介サイトが医薬品等の広告に該当するかどうかについては、個別具体的に判断されることになるが、当該紹介サイトが、リンク先の販売又は輸入代行行為を行う主体となる事業者と同一である場合や、同一とみなさるような場合等には、医薬品等の広告に該当する可能性がある。なお、リンク先のサイトのみが薬事法違反の場合もあるので、留意されたい。

となっています。つまり、紹介サイトが販売業者と同一またはそれに等しいとみなされない場合は、可能性は低そうだと読み解けます。

これをメディアの事例で当てはめると、

  • 商品を口コミなどで紹介するのは「広告」とみなされる可能性は低い
  • PR記事など、販売元と一緒に行うと同一視されて「広告」とみなされる可能性が高い

と考えて良さそうです。

また、「顧客を誘引する意図」が広告の条件にあるのですが、口コミは法的措置の対象か、JAROが検証結果を公表によると、ブログなどの口コミは「誘引する意図」はない、と判断されるそうです。

医薬品等の誇大広告等について

次の論点は、第六十六条 (誇大広告等)になります。特に「医薬品等の虚偽又は誇大な記述をしてはいけない」です。

先程のニュース中の画像に例として上がっているのが「梅肉エキスが肩こりに効く」です。

これが実に微妙で、口コミでは「肩こりが改善した!」といってる人もいるみたいなので、虚偽でも誇大でもないと考えられるんですよね。

たとえば、「梅肉エキスで、100%肩こりが治る!」は誇大だと思います。

「梅肉エキスが肩こりに効いたよ」は薬機法(旧薬事法)違反ではなさそうなんですよね。

このあたりはさじ加減なので、なんともなんですが。

WELQで考える、薬機法(旧薬事法)のまとめ

以上をまとめると、WELQの問題点としては、

  • 販売者とのPR記事だったケース
  • 口コミなどが虚偽だったケース
  • 誇大な記載がされていたケース

などが考えられます。なかなか判断がしづらく、具体的な公式見解がほしいところです。

ちなみに、違反すると、第七十二条の五により

厚生労働大臣又は都道府県知事は、第六十八条の規定に違反する広告(次条において「承認前の医薬品等に係る違法広告」という。)である特定電気通信(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 (平成十三年法律第百三十七号)第二条第一号 に規定する特定電気通信をいう。以下同じ。)による情報の送信があるときは、特定電気通信役務提供者(同法第二条第三号 に規定する特定電気通信役務提供者をいう。以下同じ。)に対して、当該送信を防止する措置を講ずることを要請することができる。

とあり、強制的に広告を止める措置を取れるとのことです。

結論となぜ詳しく調べたか

結論としては

  • 健全な方法で記事を作成
  • 医薬品等に関しては、虚偽や誇大な記述をしない
  • 販売者とのPR記事は行わない

を守っていれば、ブログやメディアを運用するのは大丈夫そうです。

ちなみに、なぜ詳しく調べたかというと

「レスベラトロールはアンチエイジングに効く!」みたいな記事を書きたいとなった時に、これは大丈夫なのだろうかと思いまして。

まず、アンチエイジングに効くっていう論文はあるので、それを引用すれば虚偽や誇大な記述にはなりません。

次に、商品を紹介したいじゃないですか。すると日本で買うとレスベラトロールって高いんですよね。なので海外の安いレスベラトロールを買いたいんです。なぜ海外は安いかというと、海外サプリで原材料になっているイタドリは原材料として安いんですが、日本では医薬品として登録されているためサプリとしては使えなんです。

すると海外のイタドリを利用したサプリは、「承認前の医薬品等」に当てはまることになると思います。さて、このサプリのリンクをブログに書いていいのか、というのが気になりました。

上記のQ&Aで大丈夫そうだと判断できそうです。

「商品名がアンチエイジングに効く!」とも言ってないので、そもそも医療品の広告にも当たらないとも考えられます。

もう少し具体例を

たとえば、最近だとイギリスのメディアでが「28gのナッツはがんのリスクを20%減らす」という記事が出てたんですよ

この記事をですね、日本語にわかりやすく解説してくれるブログやメディアって必要だと思うんです。

  • 「ナッツはガンに効果があるらしい!」
  • 「日本で買えるオススメのナッツはこちら」

と書いて欲しいのです。これがナッツじゃなくて、レスベラトロールでも同様です。

まとめ

法律は素人なのですが、日本語が理解できる範囲で、考えてみました。間違っている点などご指摘していただけると幸いです。

あと憲法の「表現の自由」との関係も気になります。

いろいろと考えてみましたが、難しいですね。もう少し情報が出てくると嬉しいです。