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おすすめの本20選!2017年に読んだ本の中で、買ってよかったもの

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 今年も沢山の本を読んだ。Amazonの購入履歴を見ながら、これは買ってよかったなと思った本を紹介したい。どれも面白い本なので、年始・年末の読書などにいかがでしょう。

反脆弱性

反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

  • 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛,千葉敏生
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/06/22
  • メディア: 単行本
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反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

  • 作者: ナシーム・ニコラス・タレブ,望月衛,千葉敏生
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2017/06/22
  • メディア: 単行本
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 今年の最も影響を受けた作家は、タレブだ。元デリバティブのトレーダーで、現在は不確実性の研究をしている。トレーダー時代には、オプション取引で「暴落」に賭け続け、巨額の富を得ている。その後「まぐれ」で作家デビュー。幅広い知識と痛快な語り口で、現在の常識的なものの見方に異論を唱えていくのは見ていて楽しい。彼の著作の中では「ブラック・スワン」は有名だろう。リーマン・ショックよりも前に出版されたこの本は、リーマン・ショックを予言しているように見える(そしてまた、リーマン・ショックで彼は大儲けしている)。また、彼の師匠がマンデルブロで、市場価格変動がべき分布に従っており、そこにフラクタル性を見出した人物だ。マンデルブロの著作「禁断の市場」に詳しい。

 そんなタレブの最新刊が「反脆弱性」だ。世の中は不確実だ。だから、人々はそれに対して堅牢さをもって対応しようとする。しかし、いくら堅牢にしたところで、そこには脆弱性が残ってしまう。だから、堅牢にするのではなく、反脆弱性によって、強くならなくてはいけない。非線形な不確実性だからこそ、そのアンバランスさを逆手に、確率的いじくり回しをして、アップサイドを得るのだ。歴史的な出来事も確率的なまぐれにすぎない。歴史は偶然によって動かされたという事例がもっと欲しければ「偶然の科学」が詳しい。またもう少しポップに複雑性が生む利点について理解したいなら「ひらめきを生み出すカオスの法則」などもオススメだ。

 またタレブは、不確実な世の中を渡り歩き、反脆弱性を上手く扱う戦略として「バーベル戦略」を提案している。8割ぐらいは月並みの国(安全な事がわかっていて、リスクを取らずに生活する。現金。)で過ごし、一方で2割ぐらいは果ての国(不確実だが、そのため果てのないアップサイドがあるリスクテイクをする。オプション。)で過ごすことを推奨している。べき法則をベースにした「80対20の法則」などでもおなじみなので、こちらを読んでみても面白い。タレブの場合は、自身がバーベル戦略で、投資の世界で大成功している。また彼は、知識は知っているだけでは意味がなく、身銭を切って実践することが大切だとも説く。それを題材にした2018年2月の新刊「Skin in the Game」も楽しみだ。

脳は「ものの見方」で進化する

脳は「ものの見方」で進化する

脳は「ものの見方」で進化する

 今さら、錯視の本?という気がするが、この本は別格だ。錯視の話から、脳はコンテキストから知覚するという話にまで発展する。そして、脳は10%の入力と、90%の記憶によって、知覚していると言う。私たちは、目の前にある世界が、そのままそこに存在しているように感じているが、そんなことはない。それは、ほとんどが記憶によって作られてるのだ。TEDではロックな兄ちゃん感があるが、とても面白い。

 記憶が脳にとって大切であることは、「カンデルの神経科学」で有名なカンデルが主張し続けていたことである。最新著書である「芸術・無意識・脳」でも、芸術を主題としながら脳との関連性を追っている。また彼の「Cells that fire together, wire together」はヘッブ則を表すのに語呂がよく、好きだ。脳の記憶とは、一緒に発火したことにより、繋がり、記憶となるのだ。

 「脳は「ものの見方」で進化する」は、世界の見方を変えてくれる。自分が見ている世界が、脳がどのように作り出しているのかを教えてくれるからだ。また、脳の仕組みを知っていると、瞑想などのマインドフルネスな取り組みが、いかに重要であるかが理解できるだろう。我々は、ほぼ全てが記憶が作り出した幻想に悩まされている。それは、ただ「たまたま」繋がっただけかもしれない。その反射的な反応を、瞑想などの訓練によって切ることができたら?脳はここまで解明されていることを教えてくれ、ワクワクさせてくれる本だ。

いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学

いつも「時間がない」あなたに: 欠乏の行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

いつも「時間がない」あなたに: 欠乏の行動経済学 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: センディルムッライナタン,エルダーシャフィール,Sendhil Mullainathan,Eldar Shafir,大田直子
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/01/07
  • メディア: 単行本
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 「脳のパフォーマンスが悪いから、貧困である」という主張は、まっとうに思える。しかし、もしそれが逆だとしたら?「貧困であるから、脳のパフォーマンスが落ちる。だから、さらに貧困になっていく」。そんな新たな視点を経済学にもたらしたのは、著者のムッライナタンだ。貧困などの「欠乏」状態によって、脳の処理能力を落としているのが問題だ、と行動経済学で主張した。

 欠乏状態になると、局所的に集中してしまう。これをトンネリングという。すると局所的にはパフォーマンスが上がる。しかし、とても狭い領域に集中しなくてはいけなくなる。なので、視野が狭くなる。これをトンネリング税という。この税が高すぎて、パフォーマンスが上がる以上に、損をしているというのだ。たしかに、悩み事が多いと、余計なことを考えすぎて、他のことに集中できなかったりする。取り越し苦労を、しすぎて、疲れてしまっているのだ

 欠乏は、他人との比較でも起こる。「幸せとお金の経済学」によると、これを相対的欠乏と呼ぶ。なので、他人と比較してでしか意味のないものだけを目的としては、幸せに生きていけない。大切なのは、他人と比較しなくても、それ自体に価値のあるものを大切にしていくことだ。貧しい国が欠乏によって、さらに貧しくなっていってる一方で、新たな幸せを定義した国が、独自の発展を遂げている国があるという世界を見ていても面白い。

身体はトラウマを記憶する

身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法

身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法

 トラウマを治す研究は、アメリカで盛んに行われている。戦争の兵隊が、トラウマを抱えて戻ってくることが多いからだ。今までは、薬理学によって治療されていた。しかし、症状を一時的に抑えることは出来ても、治療することまでは出来ていなかった。近年、脳科学の発達により、ようやく根本治療の糸口が見えてきた。

 トラウマは、脳に刻まれた、反応だ。この記憶された反応を、取り除いていく必要がある。その手法として、EMDRやヨガ(マインドフルネス)、ニューロフィードバックなどが紹介されている。まだ、完璧になぜ治るのかは分からないものの、脳科学的な知見から、トラウマの原因や仕組みは解明されてきているようである。またトラウマだけではなくそれ以外の病気が治ることも「脳はいかに治療をもたらすか」で紹介されている。どちらも重要なキーワードは脳の可塑性だ。

 脳科学的な知見からトラウマを理解することで、マインドフルネスがいかに重要であるかも理解することが出来る。「反応しない練習」でも言われているように、習慣的な心の反応を止めることで、楽になるのだ。そのために、瞑想などの訓練が必要なのだ。脳の可塑性により、反応は変えることが出来る。「今、ここに集中する」のは、昔の反応を忘れる練習をしているのだ。

マインドフルネスストレス低減法

マインドフルネスストレス低減法

マインドフルネスストレス低減法

  • 作者: ジョン・カバットジン,Jon Kabat‐Zinn,春木豊
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2007/09/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 6人 クリック: 29回
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 瞑想を始めとするマインドフルネスな取り組みが、心理療法として効果があると科学的に研究を初めたのが、著者のジョン・カバット・ジンだ。彼の研究により、瞑想研究は急速に進むことになる。その彼の研究をまとめたのが本書だ。彼の手法を実践したければ「4枚組のCDで実践する マインドフルネス瞑想ガイド」を買うと良いだろう。集中瞑想とボディスキャンのガイドと、ヨガx2という構成になってる。

 マインドフルネスは神経科学者も研究しており、リック・ハンソンの「ブッダの脳」(売り切れで高いので、同著者の「脳を鍛えてブッダになる52の方法」も良い。こちらのほうがTipsごとにまとまっていて読みやすい)も面白い。また、日本でも京都大学において研究されており、それをまとめた「身心変容の科学〜瞑想の科学」も興味深い。本は論文のまとめ集のようになっており、やや読みにくいが、どのように研究が進んでいるのかを肌感覚で知るには良い資料だろう。

 また科学的に研究されている一方で、仏教思想を学んでおくことも重要である。「仏教思想のゼロポイント」が笑えるぐらいに面白く、わかり易く丁寧だ。ブッタは「異性とも目を合わせないニートになれ」と教えた、というすごい文言が目に入ってくるが、それがまた面白い。悟りとは何か、を教えてくれる。著者の魚川さんは「ニー仏」として活動されており、ミャンマーで瞑想修行をされているそうだ。また、Web上にウ・ジョーテカの著作の翻訳を無料で公開されているサイトがある。「自由への旅(Web版)(本版)」もとてもわかり易くてオススメだ(ちなみに翻訳が一新されており、本のほうが読みやすい)。

 また少し思想や実践手法を学ぶには、禅やヨガの本を読むと面白い。アメリカに禅を伝えた鈴木 大拙の「禅 (ちくま文庫)」は禅思想を知るのに良いし、ヨガの「悟りのプロセス」は実践手法を知るのにわかりやすく解説されている。また、西洋でも教育学者として有名なルドルフ・シュタイナーも「いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか」とう本の中で、実践手法を書いている。このあたりの本は、科学的でもなく、怪しさ満点ではあるが、共通項はあって面白い。

ORIGINALS

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)

 オリジナリティが溢れる人というのは、どのような人のことを言うのだろう?そんな興味深いけど、まだ誰も科学的に考えてこなかった問題を、見事に説明するのが「ORIGINALS」だ。起業家はリスクを好むのか?オリジナリティがある人が使ってるウェブブラウザとは?など、さまざまな観点をデータを使って見事に説明していく。

 著者のアダム・グラントは、さまざまな論文を引用し、また自身でも実験しながら、みんなが興味を持ってることについて、鋭く洞察していく。前書「GIVE & TAKE」でも、ギバー(与える人)が成功する「情は人のためにならず」を心理学的に、丁寧に解説しており話題になった。また、今年はFacebookのCOOで著作「リーン・イン」で有名なシェリル・サンドバーグと共著「オプションB」もレジリエンス(心理的回復力)の本として話題だった。

 アダム・グラントはTEDにも「GIVE & TAKE」と「ORIGINALS」の話題で登壇しており、こちらもわかりやすくて面白い。こんな面白い人がいるんだ!と感動することだろう。ペンシルバニア大学の最年少の終身教授(テニュア)というのも納得だ。

SLEEP

SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術

SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術

   快適な眠りを手に入れたい人は多いだろう。快適な睡眠を得るために、やるべきことが網羅されている本が「SLEEP」だ。これほど、網羅的に解説されている本は、はじめて見た。他にも「スタンフォード式 最高の睡眠」や「スリープ・レボリューション」などの本が出たが、オススメはダントツで「SLEEP」だ。特に注目すべき点はマグネシウムについてだ。マグネシウムが不足すると、睡眠の質が悪化する。そこで、オススメしているのが「マグネシウムオイルスプレー」だ。これを朝・寝る前と、肌にスプレーするだけで必要なマグネシウムが補給される。サプリで摂るよりも安全だ。

ライフ・フロー ピュアマグネシウムオイルスプレー 237ml [並行輸入品]

ライフ・フロー ピュアマグネシウムオイルスプレー 237ml [並行輸入品]

 マグネシウムは必要な栄養素だ。そして、足りてない人が多い。また、その不足がさまざまな病気につながっている可能性がある。「奇跡のマグネシウム」(在庫切れになってしまっていて、驚くほど高い)がわかりやすくて、とても良い本だ。こちらにも皮膚からのスプレーが良いとオススメされている。

トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法

トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法

トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法

 呼吸を、日常生活で注目したことありますか?無意識に行ってる呼吸。そして、止まると死んでしまう呼吸。そんな大切な呼吸を改善しようと思ったことはあるだろうか?口呼吸がダメなのは知っているかもしれない。では、口呼吸を治すためのトレーニングは?「酸素の吸いすぎは体に良くない」と言われたたら、驚きだろうか。

 アスリートにとっては呼吸が大切であることは、よく知られている。高山トレーニングなど低酸素状態でトレーニングしたりもするし、鼻呼吸だけでランニングすることでマラソンのタイムを伸ばしたりする。

 しかし、呼吸はアスリートだけではなく、我々のような普通の人にとっても大切な存在だ。呼吸をトレーニングによって、鍛えるだけで、体調が良くなっていく。呼吸のトレーニングで鼻詰まりを治すことも出来る。我々は、酸素を吸いすぎだ。呼吸を最適化していこう。

成功するにはポジティブ思考を捨てなさい

成功するには ポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則

成功するには ポジティブ思考を捨てなさい 願望を実行計画に変えるWOOPの法則

  • 作者: ガブリエル・エッティンゲン,大田直子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/06/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 本のタイトルを見て「?」と思った人も多いだろう。ポジティブ思考って良いものなのでは?と。この本は、実はポジティブ思考が悪いとまでは言っていない。原著タイトルは「Rethinking Positive Thinking」となっており「ポジティブ思考をもう一回考えてみよう」という本だ。

 筆者の主張としては「ポジティブ思考だけでは、ダメだ」ということだ。それはなぜか?「人は夢を見ているうちに、実行に必要なエネルギーをなくしてしまうのだ」という。ポジティブに夢想していると、その夢想を脳が勘違いして満足してしまい、実行することがなくなってしまうのだ。これでは目標は達成されないのではないの?ということだ。

 では、実行するにはどうしたら良いか?それにはメンタル・コントラストが必要で、WOOPというフレームワークを使う。筆者らの研究によれば、ポジティブ思考するだけではダメで、ちゃんと現実を見て、夢を実現するために立ちはだかる障害を考慮し、障害に立ち向かうための計画を用意しなければいけない。そのために、W(wish: 願い)O(outcome: 結果)O(Obstacle: 障害)P(Plan: 計画)の順に考えよう!と言うのだ。実際にWOOPを使った時は、計画が実行されやすく、夢が叶いやすいことがわかっている。

ブレインバイブル

ブレイン・バイブル

ブレイン・バイブル

 脳を多方面から、最適化したいなら「ブレインバイブル」がオススメだ。日常のほぼすべての行動において、脳を良くするにはどうすればよいのかを科学的な知見を元に教えてくれる。簡潔に、よくまとまっているので、読みやすい。他にもちょっと変わった本として「知能はもっと上げられる」が面白かった。著者が頭がよくなるためにできることを、科学者に聞きながらひたすら実践していくという本だ。著者がぶっ飛んでいて面白い。  

 習慣の本は「習慣の力」が読み物としては面白いのだが、実際に実践しようと思うと難しいことが多い。そこで脳からアプローチした「脳が教える! 1つの習慣」が勉強になる。脳を3つの階層に分け、爬虫類脳を上手く騙すことが大切であると教えてくれる。なぜ、小さな習慣から始めるのが良いのかを、脳科学的に教えてくれる。「習慣の力」の著者チャールズ・デュヒッグは新著「あなたの生産性を上げる8つのアイディア 」を出しており、こちらも面白いのでぜひ。

細胞から若返る! テロメア・エフェクト

細胞から若返る!  テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム

細胞から若返る! テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム

  • 作者: エリザベス・ブラックバーン,エリッサ・エペル,森内薫
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2017/02/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 テロメアの研究でノーベル賞を受賞した著者が、わかりやすくテロメアについて教えてくれる本。科学的に難しい話だけではなく、ではどのように生活すればよいのか?を教えてくれているのが良い。テロメアは細胞分裂の寿命を決めていると言われている。それが短くなると、寿命が短くなってしまうのだ。テロメアが短くならない、または伸ばすことができる方法も教えてくれる。

 科学者の本は面白い。生物学はまだまだフロンティアでわからないことだらけだ。「寄生虫なき病」では、寄生虫を体内から排除してしまったために起こる健康被害を書いている。著者は頭がおかしくて、自ら寄生虫を体内に入れようとしている。また「失われてゆく、我々の内なる細菌」では、腸内細菌の大切さと、抗生物質によって腸内細菌のバランスが崩れていることに警告を鳴らしている。腸内細菌が重要であることは、最近じょじょにわかり始めている事実だ。

 遺伝子にもエピジェネティクスという新しい概念が生まれている。「遺伝子は、変えられる」というキャッチーなタイトルな本に詳しく説明されている。生まれ持った遺伝子も、環境によって発現するかどうかは変わるのだ。また「今でも私たちは進化しているのか」では、牛乳が飲めるようになったのって実は最近なんだよ(アジア人はまだダメだけどね)のような話が面白い。乳糖を分解できる腸内細菌を雇い始めたのは、人類史においては最近の話だ。

 自然とたわむれることが、健康によいのはなんとなく理解しているだろう。森林浴は、日本が生み出した健康になるための良い文化だ。それを科学的に調査して、本当に自然は健康に良いことを教えてくれるのが「NATURE FIX」だ。この本を読めば、きっと週末は山登りに行きたくなるだろう。

インビジブル・インフルエンス 決断させる力

インビジブル・インフルエンス 決断させる力

インビジブル・インフルエンス 決断させる力

 私たちは「自分で決めている」と思っても、実はそんなことはない。実は、周りの影響を、これでもかというぐらいに受けているのだ。どれぐらい影響があるのか?それを調べたのが「インビジブル・インフルエンス」だ。社会学的な実験が多数紹介されており、面白い。ゴキブリを使った実験は、笑えるので見て欲しい。その実験から、どのような作業を少しガヤガヤしたカフェで行い、どのような作業は静かな自室でやるべきという考察をしている。

 社会学の本は面白くて、「ピーターの法則」なんかも好きだ。会社で地位が上がっていくにつれて、どこかで自分が能力が発揮できる限界が来てしまう。すると、その地位に吹き溜まることになる。そうすると、仕事に慣れてきてしまい、パフォーマンスがどんどん下がっていく。そのためにどうすればいいか?自分がいちばん好きな地位に留まるために、バカを装え!というのだ。これを創造的無能と呼んでる。変な髪型して、変な服着て出社しろ!そしたら、出世しないから。おもしろすぎる。

新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで

新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで (ブルーバックス)

新しい免疫入門 自然免疫から自然炎症まで (ブルーバックス)

 ブルーバックスの本は、科学好きにはたまらない。免疫は自然炎症などの解明が進んできて、まだまだ新しい発見がある面白い分野だ。免疫が弱ると、体内に細菌が充満し病気になる。なので、免疫を高めないといけない!というのが一般的な見解だろう。しかし、ストレス等によって免疫が異常に高まってる状態が続くと炎症と呼ばれる。免疫の暴走だ。この炎症は、すべての病気の元になってるんじゃないかというわけだ。アレルギーも炎症だし、アルツハイマーなども炎症が原因で起こる病気だ。また免疫は日本人の研究が強いので、読んでいて面白い。

 「ミトコンドリア・ミステリー」もミトコンドリアという体内に住む異生物を知るには面白い。細胞の中に、人間とは違った遺伝子を持ち、なぜかATPというエネルギーを生成してくれている生物がいるのだ。ミトコンドリアは人間の寿命にも重要と言われており、ミトコンドリアを鍛えることも重要である。運動をして呼吸制限をしたり、カロリー制限をすると鍛えられるんじゃないかと言われている。脳を鍛えるためにも重要で、「シリコンバレー式 自分を変える最強の食事」でおなじみのデイヴ・アスプリー の最新作「HEAD STRONG」でも一番の主題はミトコンドリアの鍛え方だ。

知的トレーニングの技術

知的トレーニングの技術〔完全独習版〕 (ちくま学芸文庫)

知的トレーニングの技術〔完全独習版〕 (ちくま学芸文庫)

 研究者はどのような考えを持ちながら、研究をしているのだろう。どのようなトレーニングをすれば、研究者のような頭になることができるのだろうか。それを詳しく、独学で実践できるように教えてくれる本が「知的トレーニングの技術」だ。情報の収集の方法から、整理し、アウトプットするまで詳しく教えてくれる。

 似たような本として、「思考の整理学」も有名だ。エッセイで読みやすい。東大や京大でよく読まれてる本として紹介される事が多い。アイディアを酒造りに例えているのも面白い。アイディアに関しては「アイディアのつくり方」が詳しい。また「知的複眼思考法」なども研究者が学ぶべき、思考法を教えてくれる。組み合わせて、多面的に考えることが大切なのだ。

 研究には、本を読むことは大切だ。「本を読むための本」が本の読み方は参考になる。本の読み方を4種類紹介してくれている。使い分けることが大切なのだ。

 大人になってから勉強するには「新・独学術」なんかがオススメだ。高校の基礎学力を学びなおすことが、近道だと教えてくれる。

アイデア大全・問題解決大全

アイデア大全

アイデア大全

問題解決大全

問題解決大全

 「知的トレーニングの技術」の拡張版をブログ「読書猿Classic: between / beyond readers 」でやっている言う読書猿さんの本。知識が豊富で、アイデアを出すための方法と問題解決するための方法が、幅広く非常にわかりやすくまとまっている。

 アイデアを出すための方法をまとめた本は、他にもある。しかし、その背景などを細かく解説してくれている本は、この本を除いては見当たらない。膨大な参考資料から、それをシンプルな形でまとめ上げている本書は、手元に辞書として置いておきたい。

史上最強の哲学入門

史上最強の哲学入門 (河出文庫)

史上最強の哲学入門 (河出文庫)

史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち (河出文庫 や 33-2)

史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち (河出文庫 や 33-2)

 笑いながら、哲学を学べる本があっただろうか。それが「史上最強の哲学入門」だ。バキの表紙が印象的だ。本文もバキ感がある。内容は哲学の考え方を、誰にでも理解できるようにまとめ上げている。ストーリー調になっており、一気に楽しく読むことができる。

 特に、東洋編が、異色で面白い。西洋哲学は「ソフィーの世界」など、入門書としてわかりやすいものはあった。しかし、東洋哲学はその性質から、入門書を書くのが難しいのだ。そこをやってのけたのが、「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」だ。はじめに、では本書を書くことがどれくらい大変だったのかが、面白く書いてある。ぜひ、はじめに、だけでも読んで欲しい。ちなみに、東洋編は読むと「やや、悟ることができる」と評判だ。

よく眠るための科学が教える10の秘密

よく眠るための科学が教える10の秘密

よく眠るための科学が教える10の秘密

 リチャード・ワイズマンは、面白くて怪しい分野に科学を当てはめる天才だ。例えば、「よく眠るための科学が教える10の秘密」は睡眠の本なのだが、この本はよく眠るためのだけの本ではない(タイトルが悪い!)。一番面白いのは、明晰夢の話だ。明晰夢とは、夢を見ている時に「これは夢だ!」と気付いて、その後自由に操れる夢のことだ(見れる人は羨ましい)。リチャード・ワイズマンは「明晰夢で何かを練習したら、現実でも上手くなってるのでは?」と思いついた(発想がミーハーすぎておもろい)。そして、実際に実験して、上達したことも明らかにしている。

 リチャード・ワイズマンは他にも「運の良い人ってどんな人なんだろう?」と思いたち「運のいい人の法則」という本を書いていたり、「好きだから、ドキドキする?ん?逆じゃない?ドキドキするから、好きになるんじゃない?」と思いたち「アズイフの法則」と名前を付けて「その科学があなたを変える」という本を書いている。なんともミーハーな学者だろう。とても好きだ。

英語教師のための第二言語習得論入門

英語教師のための第二言語習得論入門

英語教師のための第二言語習得論入門

 結局、英語を勉強するのにベストな方法は?その答えを知るためには、第二言語習得論を学ぶと良い。科学的に第二言語を習得するための理論が説かれている。結論としては、多読・多聴だ。とくに日本人の英語教育は、理解に重きが置かれすぎており、インプットが全然足りていない

 では、どのような指導がされており、どのような本を読めばいいのか。それには「英語多読・多聴指導マニュアル」が参考になる。さまざまなレベルづけがされた、多読用の教育教材が紹介されている。他にもアルクの「大学生になったら洋書を読もう」や洋書ファンクラブでおなじみの渡辺由佳里の「ジャンル別 洋書ベスト500」なども参考になるだろう。  

1440分の使い方

1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣

1440分の使い方 ──成功者たちの時間管理15の秘訣

 1日の時間をどのように過ごしたら、生産性の高い1日となるのだろうか?その秘訣はあるのだろうか?タイトルの1440分とは1日24時間を分で表した時間だ。成功者がどのような時間の使い方をしているのか?朝の時間の過ごし方のオススメは?などを教えてくれる。科学的な研究による根拠のある記述も多く、とても参考になる。

 他にも知識を面白く、わかりやすくまとめるのが上手な人がいる。精神科医の樺沢 紫苑だ。精神科医をしながら、本を書き、SNSを使いこなしている。「神・時間術」では時間を最大に活かすために、時間ごとにどうすればよいのか?を教えてくれる。

 他にも自身の経験と、豊富な参考資料をもとに、さまざまな分野をまとめてくれている。「ムダにならない勉強法」や「覚えない記憶術」、「読んだら忘れない読書術」なども面白かった。ネーミングセンスもチャーミングで「ウルトラマン読書法」などが出てくる。

BLUE GIANT

BLUE GIANT(1) (ビッグコミックス)

BLUE GIANT(1) (ビッグコミックス)

 面白かった漫画といえば「BLUE GIANT」。真正面から、やりたいことを追いかける系のマンガで、ドストレートでいい感じだ。好きなことで生きていく。そして、その姿を見て、感化した登場人物の思いなどの感情描写が上手く、泣けるマンガと話題だ。ちなみに、1巻はさほど面白くない。巻数を重ねるごとに徐々に面白くなっていき、最後まで読むと「読んでよかった!」と思えるマンガだ。オススメ。

 実は、ジャズをやろう!という機運が高まってから「BLUE GIANT」を読んで、さらにテンションが上り、ついにジャズギターの教本「3年後、確実にジャズ・ギターが弾ける練習法」を買った。音楽理論を勉強しながら、曲の構成を学んだり、アドリブが弾けるようになったり、かなり高度なところまで教えてくれる。3年間、コレ一冊で楽しめるみたいなので、じっくり練習していきたい。セッションで、アドリブが弾けるようになりたいと思っている。

 

まとめ

 2017年も沢山の本を読んだ。とても楽しい本ばかりだった。今までのものの見方を変えるような本にも出会えて、やっぱり本を読むのは楽しい。新しいことを知り、考えることができるのは本当に楽しいものだ。

 年始年末に一冊いかがでしょうか?また、みなさんのおすすめの本も教えてください!