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体内にポリフェノールを取り込むための、バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)入門

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 ポリフェノールは大切だ。さまざまな病気を防ぐことが、研究によってわかってきている。野菜や果物に多く含まれており、知ってる人も多いだろう。他には、赤ワインやコーヒー、チョコレート、オリーブなどにも含まれている。

疫学での研究

 ポリフェノールがもたらす健康効果は、疫学(集団を対象にした観察研究)でよく調べられてきた。例えば、ポリフェノールたっぷりの地中海料理(オリーブオイルや赤ワインを好み、野菜や果物をたくさん)を食べてる人は健康的だといったようにである。

実験室から

 研究者たちは、もっとポリフェノールのことを知ろうと、研究を進めてきた。たとえば、コーヒーがDNAの酸化ストレスから守ってくれるかもしれないという研究は、マウスの細胞実験として行われている。

 このような研究から、ポリフェノールは効果があると実験室の中ではわかってきた。しかし、実際に人間が摂取してみると思ったように効果がないことが、しばしばある

 ポリフェノールには効果があったとしても、それを生体内に上手く取り込んで利用できないと、意味がない。つまり研究は、ポリフェノールの効果だけにとどまらず、ポリフェノールをどうやって取るかまで研究しないといけないのだ

バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)とは

 このように栄養素がどれぐらい体に吸収され、利用されるのかということに興味がある。これをまとめて、 バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)と呼ばれている。どれぐらい、生物にとって利用できるのか?という言葉である。これを研究することが大切だ。

 もともとバイオアベイラビリティは薬理学の言葉であった。薬が目的の症状に対して、どれぐらい効果があるのかを示す言葉だ。有効成分が入っていたとしても、それが幹部に届かなければ、バイオアベイラビリティは低いということになる。一方で、どこにも漏れることなく、患部に届いて効果があれば、バイオアベイラビリティは高いということだ。

バイオアベイラビリティに影響する要因

 さて、ポリフェノールも、接種するならできるだけバイオアベイラビリティを高くしたい。せっかく野菜や果物を摂取していても、体内にポリフェノールを摂取できないと意味がないからだ。そこでポリフェノールのバイオアベイラビリティを調べたレビュー論文を読んだ[1]。

 どのような条件で、バイオアベイラビリティは変化するのだろう。わかりやすい要因は4つだ。

  • 食物そのものに与える外部要因
  • 調理方法
  • 食べ合わせ
  • 体内環境

食べ物そのもの

 オリーブはポリフェノールたっぷりだ。しかし、実が熟していくほど、ポリフェノールは減っていくことがわかっている。

 このような熟成期間であったり、日射時間などの外部要因が食物が持っているポリフェノール量に影響を与える。

調理方法

 オリーブオイルのポリフェノールは熱に弱い。加熱すると、ポリフェノールがとても早く減ってしまう

 他には、ニンジンは茹でてはいけない。完全にポリフェノールがなくなってしまう。蒸したり、揚げたりするほうがポリフェノールを守ってくれる。ブロッコリーやズッキーニは、茹でたり揚げたりするよりも、蒸したほうが良い。ブロッコリーは蒸すと、そのまま食べるよりポリフェノール量が増えるのだ。このように、野菜によっても、調理方法による影響は変わる。

 また、生野菜が良いというわけではない。トマトは、調理済みのほうがリコピンは上昇する。トマトピューレやペーストなどのほうが、フレッシュなトマトより良い。

 保存方法もポリフェノールに影響を与える。例えば、ブロッコリーを冷凍してしまうと、ポリフェノールが約半分も失われる。保存すると減るものばかりではない。りんごやにんじんは、保存しておくと増える。

 また、オリーブオイルは光に弱い。

  • 光を通すボトルに入れて4ヶ月放置すると、45%減る
  • 暗い場所に8ヶ月おいておいても、減らない

       このように、調理法から保存方法まで、さまざまな要因がポリフェノールに影響を与える。しかも、野菜によって効果が違うのがやっかいだ。

食べ合わせ

 ポリフェノールは、脂肪と一緒に食べるとバイオアベイラビリティが高まることがわかっているサラダに油入りのドレッシングをかけた実験や、ケルセチンと脂肪食の実験などが有名だ。

 他にも食物繊維の一種であるペクチンは、ケルセチンの吸収を促進する。

体内環境

 接種する人の状況によっても、摂取できるポリフェノールは違う。例えば、大豆などのイソフラボンから、体内で有効成分であるエクオールを作り出せる人は、西洋人では30〜40%であるが、日本人は60%もいる。

 このような違いは、遺伝子的な違いであったり、腸内環境の違いによってもたらされる。

バイオアベイラビリティの研究は難しい

 これまでみてきたように、さまざまな要因によって、ポリフェノールのバイオアベイラビリティが異なってしまう。私達が気をつけることができる調理法や食べ合わせだけでも、多くの組み合わせがある。

 全部は覚えられないかもしれないが、簡単なものだと「サラダには油をかけよう!」のようなものは実行可能だろう。オリーブオイルは遮光瓶の商品を買うべきだ。

 面白い研究分野なので、いろいろと調べていきたいと思った。調理方法や保存方法が重要なこと、食べ合わせによって吸収率が変わることなどは意識して実行していきたい。