認知科学の分野では、「学習を科学する」研究が盛んに行われるようになった。どうやって勉強すれば、効率的に勉強できるのかはとても興味深い分野だ。僕も認知科学の中でももっとも興味がある分野のうちの一つだ。心理学や脳科学が発展してきており、わかることが多くなってきている。
「キリストが再臨したかのような騒ぎだ」と語るのは、Learn Betterの著者アーリック・ボーザーだ。彼は、Learn Betterの中で、その認知科学の騒ぎを上手くまとめているので、紹介したい。
Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ
- 作者: アーリック・ボーザー,月谷真紀
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/07/19
- メディア: 単行本
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学習のための6つのステップ
まず、学習は大きく6つのステップに分かれる。この6つのステップを順に進んでいくことが、学習を効率的に行うためには重要だ。6つのステップを紹介したい。
- 価値を見出す
- 目標を設定する
- 能力を伸ばす
- 発展させる
- 関係づける
- 再考する
価値を見出す
まず学習を始めるためには、その価値を見出すことが重要だ。学習をするにはモチベーションをしっかりと持たないといけない。価値を見出しているかどうかで、学習の効率は変わってしまうのだ。動機づけが重要なのだ。
僕だったら「能力を最大化する知識を手に入れたい」というのが、学習の価値だ。そのために英語を勉強し、「論文を読めるようになり、最新の科学に自由にアクセスできるようになる」ことが目的だ。英語を勉強すると、こんな価値があり、自分にとってどれぐらい役に立つかを考えよう。
目標を設定する
価値を見出したら、次は目標だ。目標を設定するときは、具体的で計測可能な目標が良いだろう。具体的にしておくことによって、振り返ることが出来る。
例えば「一ヶ月に一冊の洋書を読む」「MOOCsを受講スケジュール通り終わらせる」などが僕の具体的な目標だ。これらは、振り返ることが出来て、出来たか出来なかったが明確だ。
目標の設定には、OKRなどの手法を使うのも良いだろう。もともとは、組織の目標をマネージする方法だが、個人にも使えるはずだ。目標のたてかたや、振り返りの方法などが参考になる。
OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法
- 作者: クリスティーナ・ウォドキー,及川卓也(解説),二木夢子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2018/03/15
- メディア: 単行本
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能力を伸ばす
能力を伸ばすのには、学習理論の様々なテクニックが使える。例えば、
- 外部からのフィードバックを得る
- テストを受ける(ミニテストを自分で作る)
- 検索学習を行う
- マインドセットをしなやかにする
- 学習日記をつける
MOOCsを使えば、テストを受けることが出来し、学習ログが残る。また、マインドセットは重要だ。キャロル・S・ドゥエッグのマインドセット「やればできる!」の研究はぜひ読んで欲しい。
- 作者: キャロル・S・ドゥエック,今西康子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2016/01/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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発展させる
学んだことをさらに発展させる。自分独自の解釈を加えたり、応用して実践してくことも重要だ。そうすることによって、知識が血肉化される。
教えられたことを学んだだけでは不十分で、自分なりの解釈や実践が大切なのだ。また、人に教えることも効果的だ。人に教えようとすると、自分なりの説明をすることが必要になり、自分の理解度がわかる。
僕がブログを書いている理由のうちの一つは、自分の理解度を上げるためだ。書くことによって、学んだことがまとまり、自分の知識になる。読んだだけで、学びっぱなしとは効果が違うのだ。
関係づける
他の分野の知識などと関連づけをして、自分独自の知識体系に組み込むことも重要だ。関連付けをすることにより、記憶力は強固なものになるし、クリエイティビティも上がる。
関連付けをするためには、視覚化を行うのが良い。マインドマップを使うのも手だろう。また、仮設思考やアナロジー、メタファーなどを使ってみるのも良い手だ。
再考する
学び終わったら時間を開けて、再び考えてみることも重要だ。一度学んだだけでは、忘却曲線にしたがい忘れてしまう。そのため分散学習することが大切だ。知識を身につけるためには、時間を開けて何回も学習するのが良い。
学習のための科学が面白い
新しい知識を学ぶことは面白い。新しいスキルを身につけるのは楽しい。でも、できるだけ苦労せずに、効率よくやりたい。そんな時に、最新の認知科学は助けになってくれる。
「価値を見い出せ!」なんて、当たり前じゃんと思うかもしれない。しかし、やっと科学的にその効果がわかってきたのだ。これは、面白いことである。
ざっと、Learn Betterの内容をかいつまんで紹介した。面白い本なので、ぜひ読んでみて欲しい。本の所々で、抜き打ちテストが出題され、それに答えるもの面白い。
Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ
- 作者: アーリック・ボーザー,月谷真紀
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