GRIT(やり抜く力)は成功には大切だよ、という話が最近話題だ。もともとはマシュマロ・テストのように、目の前にある誘惑に我慢できる子供は、セルフコントロール能力が高くて、すごいよ!みたいは話から始まっている。
セルフ・ディスタンシング
じゃぁ、どうすればセルフコントロール能力が上がるの?が気になるところだ。その一つの方法として、「自分を客観的に見る」という方法がある。self-distancing(セルフ・ディスタンシング)と呼ばれている。
自分を他者として客観視する方法はいろいろ考えられており、一番簡単なのは自分の名前を呼んで、三人称で考えてみることだ。「自分は頑張っているのか?」と一人称で問いかけるのではなく、「太郎は頑張っているのか?」と自分の名前で問いかけてみるのだ。すると、自己と認識との間に距離が生まれ、セルフコントロールしやすくなるという方法だ。
奇妙な方法としては、「自分を壁に止まったハエ」だと思う、というものがある。意味不明なのだが、壁に止まったハエだと思うことで、セルフコントロール能力が上がり、イライラが収まるらしい。
バットマン効果
さて、他にも有名なものとして、バットマン効果というものがある。子供のセルフコントロール能力を上げる方法として、バットマンになりきってもらうという方法だ(キャラクターは憧れているものであれば良い)。バットマンになりきるための小道具(例えばマント)などをわたして、今から君はバットマンだよ、と教えるとセルフコントロール能力がある。
バットマン効果の検証
実際に、それを実証した研究がある[1]。この研究では、10分間つまらないタスクを子供にお願いする。一方で、近くにiPadがおいてあり、そこには魅力的なゲームがインストールされて遊べるようになっている。実験では、どれぐらいの時間を子供がタスクに取り組めたか、を計測する。
子供を3つのグループに分けた。
- 「Am I working hard?(自分は頑張っているか?)」とタスク中に自分に尋ねるグループ
- 「Is (child’s name) working hard?(太郎は頑張っているか?)」とタスク中に自分に尋ねるグループ
- 「Is (character’s name) working hard?(バットマンは頑張っているか?)」とタスク中に自分に尋ねるグループ(小道具が渡され、バットマンになりきっている)
バットマン効果の結果
結果は、バットマンになりきってるグループがタスクを行っている時間が最も長かった(60%の時間タスクに取り組んでいた)。次に長かったのは、自分の名前で呼びかけたグループで、45%の時間タスクに取り組んでいた。短かったグループは一人称で呼びかけたグループで35%の時間タスクに取り組んでいた。
自分と距離を置くことで、セルフコントロール力があがり、目の前の魅力的な誘惑を我慢することができ、やるべきことに集中できるようになる。つまならないタスクでもやり抜くことができ、GRITが上がっている。そう、バットマンならね。
大人へのセルフ・ディスタンシング応用
これを大人が実践するにはどうしたらいいかは悩ましい。マントを職場に持っていくと、変な人だと思われかねない。応用するなら、例えば肩書などが使えるかもしれない。「スーパーエンジニアは頑張っているか?」「社長は頑張っているか?」のように、なりたい肩書であると思いこんで、問いかけてみる。
他には、ロールモデルを使うのも良いかも知れない。その人になりきって、「ロールモデルならどうするか?」と問いかけてみるのも良いだろう。
セルフ・ディスタンシングの手法を使い、セルフコントロール能力を高め、つまらないタスクをやり抜こう。
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